蜂に刺された転換点


田舎帰省中に DIYで漆喰塗りの続きをすることになった。

ようやくキッチンの漆喰塗りの終わりがみえてきたので、楽しみとかなさり、すこし気持ちが急いていた。壁の下地塗りなら私にも手伝えるが、最終仕上げは、旦那さんがやらないときれいに仕上がらないので、今回は、私の仕事は掃除のみとなり、はじめの2日間、まずお墓参りをすませた後にのんびりすることになった。

その日の朝も、旦那さんは本職の作業仕事もある中で、 DIY作業量も多く、申し訳ない気持ちになった。
朝食が終わって、のんびり動画でもみたかったのに、本心とは完全にブレた状態で、旦那さんに「なんかやることある ?」とたずねた。そうたずねている自分が、不思議なほど本来の自分とブレていることもわかっていた。ブレないようにいつも気をつけていたのに、田舎の空気にあまりにもリラックスしていたら、そんな風になっていた。

旦那さんが「外の昔洗濯機を置いてあった場所を掃除して、家の中にある使わないブロックを運んどいてほしい」と言った。まず言われた場所をみに行くと、父亡き後に外使用していた洗濯機を片付けた場所が、中途半端にそのままになっていて、そこには古い板やらブラシや枯葉がつみ重なり散らばっていた。

その場をみたら、俄然掃除をする気力がわいて、箒で枯葉の塊をきれいにはきだし、そのあたりをスッキリと片付けようと思った。箒で枯葉を触った途端、足首にチクっと痛みがきた。まさかムカデか!!っとあせり、足を大きく振り払うと、目の前に小さな蜂が4匹連なって飛んでこちらをみていた。蜂に刺されたことがわかり、台所にもどって氷で冷やしながら、旦那さんに針を確認してもらったが針がないという。針がないなら、少し痛みをこらえて冷やせば気合いで治せるだろうと思いきや、痛みはみるみるとひどくなった。

旦那さんは 、AIで処置法を調べていた。アナフィラキシーショックで死ぬこともあるらしい。蜂に刺されて死ぬならそれも仕方ないと思った。

病院に行った方がいいというので、旦那さんに車で病院に行ってもらい、薬を飲んで注射をうった。医師に「4箇所刺されているけど、針はありません。痛みがひどければ一番強力な注射もあるけどうちますか ?」と言われたが、最小限にしてもらい帰宅した。けれど痛みは思ったようにおさまることはなく、このままずっと痛ければ私はまったく動けなくなり、田舎での仕事ができないだけでなく、いちいち動くたびに旦那さんのフォローも必要になる。こんな状態で東京にもどったら、旦那さんは仕事で、母を予定日に施設に迎えにも行けない。旦那さんは、やらなくてはならないことが増えすぎて身動きが取れなくなるだろう事態にあせりはじめていた。

普段、自分の力は小さなものであっても、家族がひとり倒れると、雪崩のようになるものだと思った。とくに2拠点なんかしていると、もし休日の田舎で予想外の事故や怪我があったら、旦那さんの東京での仕事は大変なことになるのだ。そんなことも思って、夕方また診療所に行って一番強力な注射を打ってもらいようやく痛みがおさまった。記憶では、蜂に刺されたのははじめてかもしれないし、いつも田舎で、けっこうな草むらを、無防備に掻き分けて草取りをしているのに、蛇にもムカデにも蚊にさえも刺されないことは不思議なほどだった。菜食の人は身体から発する匂いが薄いらしく、虫にも狙われにくいと聞いたことがあったので、 (今は魚は食べているが )安心しきっていた。

刺されたあとは、自分の痛みをずっとただただ観察し続けた。
なぜ刺されたのかの意味にも、自分で納得したかった。

1;そもそもやる気がないのに、手伝おうとした。
本来の自分の気持ちと、行動がブレていたことがこうなった原因だったことをまずはじめに感じた。
2;そうは言っても、理由を色々探すこと事態が意味のないことだとも思った。
ただ刺された。それだけで、それ以上でもそれ以下でもないのだとも思った。

3;痛みを観察し続けるうちに、雄蜂が、メスと巣を守るためにあんな風に攻撃してきたことに逆に感動がわき起こり、あんなに小さいのにチームの信頼感は人間よりもずっと厚いのだろうと思ったら、泣けてくるほど感動し、その感動は深く続き、蜂の洗礼を受けたのだとも思った。

蜂に刺されたことからこれだけの気づきがあって、それで十分だと思っていた。
看護婦さんに聞いたことだが、台風前で蜂も気分が荒れているのだそう。
蜂の巣を片付けるのは冬まで待とう


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そのあと、グーグル検索で「スピリチュアル、足を蜂に刺された」を検索すると、 AIモードで色々な理由が並べられていて、読むほどにごもっともだと思いはじめた。

書かれていたのは、こんな内容だった。
無理への警告でもある、足止めを食らう、足元を固める必要がある、急がないで立ち止まれ、
転換点というメッセージでもあるなど。

AIは「他に何か気づいたことはありますか」とか、根掘り葉掘り質問をしてきた。

「昨日お墓まいりに行ったばかり」と、「この間はほぼ同じ場所で指をきり8ホチキスした」ということも伝えると、「お墓まいりのあとであればご先祖様からのメッセージですね」「4蜂と8ホチキスで12針ですね!!12というのは、サイクルの完結の数字です」というではないか。
私も「確かに!!」と、まさかその数字を合計してまで意味をつくるのかと思った。

AIのスピ占いにより、ただ刺されただけということと、蜂の団結力に感動した以外にも、自分自身をもっと再考せずにはいられなくなってきた。
そのすきに、旦那さんに「後厄だよね。」とも言われた。前厄本厄では何もなかったけれど、後厄で、ほとんど同じ場所で続いた厄。2つとも田舎でのこと。そして今回は御墓参りのあとだった。確かにご先祖様が何か伝えたかったのだろう。

そうこうしながらも、その合間に久しぶりにネットフリックスを観た。特別観たいものがなかったので、ドキュメンタリーを探すと、最初の方にベッカムが出ていた。ベッカムのファンでもないがサッカーが終わったばかりなので、ベッカムをみた。すると、ドキュメンタリーのはじまりが、ベッカムが真っ白い養蜂スーツを着てはちみつ採取している場面からだった。なんと蜂つながりのシンクロ。これは意味がありそうだ、、、と思って、結局数日間かけてベッカムのドキュメンタリーをすべて見た。人気のあるサッカー選手はこんなにも過酷だったのかと驚いたこともあるけれど、それよりも、サッカーという職業と、奥さんとの関係の中で、ベッカムは奥さんのことを大切にしているが、奥さんのことが気になると仕事に集中できないという場面がドキュメントの中でなんどか繰り返されていたことが自分の中でピンときた。

男性の集中力は、そういうことで散るんだなということが理解できたのは発見だった。
そこから自分たちの生活のことに思いめぐらせた。田舎のDIYを進めようとしていたことで、気が急いていたのは確かなこと。仕事もある旦那さんには、予定は大丈夫かを確認をして田舎に帰省していたけれど、それでも無理をさせていたかもしれないと思って、旦那さんに謝罪をして、いろんな話をした。結局私たちは旦那さんの仕事も、母のショートステイの施設預けも東京にあるから、田舎暮らしはできない現状。「いろんなことを無理に急いでやるな」というご先祖さまのメッセージは確かにあったかもしれない。

この数年も時間をかけて過去の自分を見直して、取り戻している感覚はあるけれど、もっともっとゆっくりした方がよいのだろうと感じた。

物質主義に生まれているから気づかないままのことも多いけれど、あれやこれやお金を稼いで使うような生活を永遠にまくし立てられてきた結果、人間の心は崩壊しているし、連なって自然も崩壊している。けれど、自分の身体や心が崩壊していることに気づけないままの人もたくさんいる。

蜂のチームを守る習性をみて、人間の世界には、果たして蜂や動物昆虫や自然のように、信頼が当たり前にある世界があるだろうかと思ったら、人間は本当にやばいのだと思った。悪い風潮や欲望に無意識に流されたままだと、自分自身への信頼さえも見失ってしまう。

私はゆっくり生活するようになって、本来は女性の心身は社会で活躍するためにできているものではないことを感じるようになった。けれど、男性もフェミニンになっている。これはどちらも、外に出て働くようになり、親が子供をみる時間が削られ、それが当たり前になっていることや、あらゆる積みかさなった生活毒のゆえんだと思う。無謀な忙しさは人本来の性質を削っていくのだと思う。



蜂に刺されたことからはじまって、いろんな反省点が見つかった。
よく言われている「ていねいに」という言葉だと、私にはどこかかたくるしいけれど、もっともっとゆっくりとじっくり味わって生きようと思った。まず、自分をもっと大切に、そのそばにいる家族を大切にして。
急ぐことや力むことは、本当の自分を生きることではない。

なんとなくみる今の景色も、これが初めてでそして最後なのだ。
東京の電線がいくつも絡まった先にみえるうす汚れた空気の先にある空でさえも、今みた景色はこれが最後。そういったことさえも、ゆっくりと味わおう。

瞬間瞬間に、いつもゆっくりとした気持ちで立ち会おう。

たとえ、車が通らないような小さな横断歩道の信号機が赤で、たくさんの人が足早に渡ったとしても、青になるのをゆったりと待とう。

母の食事の時間、口を開けるタイミングがなかなかこないときにも、ただゆっくり母が口を開けるタイミングを待とう。

スズメバチに刺された痛みで、自分の内側にひたすら目を向けていたら、思っていた以上の転換期になって、そのあとの毎日が前よりもずっと新鮮な日々になった。








 

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